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導入企業の7割が業務改善効果を認める
ここ数年間にBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を導入した建築設計事務所や建設会社が急増していることが、「BIM活用実態調査レポート2011年版」で明らかになった。導入理由のトップは「業務の効率化やワークフロー改善」で、BIMを導入した企業の7割が業務改善の効果を認めるなど、導入後1~2年で成果を上げている企業の姿が浮き彫りとなった。
BIM活用実態調査レポートとは?
日本の建築実務者など517人の回答結果を集計・分析、活用事例も掲載
「2009年は日本のBIM元年」と言われるように、ここ数年、日本の建築業界ではコンピューター上に構築した建物の3次元モデルによって設計や施工を進めるBIMの導入が広がりつつあります。 日本国内のBIM活用の実態を明らかにするため、日経BP社の建設・不動産総合サイト「ケンプラッツ」と日経BPコンサルティングは、2010年9月から10月にかけて、インターネット上で「BIM活用実態調査」を実施。建築実務者など517人から回答を集めました。
「BIM活用実態調査レポート2011年版」では、BIMの導入から活用内容、そして導入による社内的、作業的、職種的な効果まで、40問近くの回答内容を統計的に分析。アンケート調査結果に考察を交えて解説しています。さらに、発注者や建築設計事務所、建設会社、設備会社、メーカーでのBIM活用事例をレポートしています。
日本の建設業界におけるBIMの導入や活用、その効果といった、建設業の新たな成長戦略への展望が、この一冊で分かるようになっています。ボリュームはA4判で52ページです。以下に、同レポートの概要を紹介しましょう。
日本での導入状況は?
回答者の8割がBIMを認知、3割が「競争力」として認識
「BIM」という言葉を知っている人は回答者の76.4%に上り、3年間で2.5倍に増えました。「BIMの活用能力は企業の競争力だと思う」、「今、ビジネスで成功するためにBIMは重要だと思う」と回答した人もそれぞれ約3割に上り、BIMに対する認識は、設計の道具というよりも、企業の競争力を左右する経営戦略的ツールへと大きく変わってきています。
その傾向はBIMの導入理由にも現れています。BIMを導入した一番の理由として「業務の効率化、ワークフロー改善のため」が「CGやパースなどプレゼンテーションのため」を大きく上回りました。これは、最近2年間でBIMに対す建築実務者の認識が変わったことを裏付けています。
BIMを導入していない企業に勤める実務者でも、「今後、5年間でBIMは重要となる」と回答した人が過半数を占めました。
BIMの導入理由は「業務の効率化、ワークフロー改善のため」がトップに
BIMが活用されている業務は?
意匠設計から「構造解析・エネルギー解析」へと活用範囲が広がる
BIMの活用業務で注目すべき点は、構造設計や設備設計、施工管理など建設プロジェクトの下流部分での利用が2年間でほぼ倍増したことです。 具体的には「設計内容のプレゼンテーション」や「空間利用計画の検討」、「部材の干渉チェック」などが多く、さらに「建築確認申請書類の作成」、「空調・風解析」、「照明解析」など、活用の幅が広がっていることが分かります。
建物のBIMモデルの中に各部材の材質や仕様などのデータを入力した「属性情報」の活用も、図面や建具表の作成から、見積もり、構造解析・エネルギー解析まで広がっています。
実務者が使っているBIM用の意匠設計ソフトや解析ソフトなどの種類も明らかになりました。例えば、オートデスクの「Revit Architecture」は、2003年に日本語版が発売されてからわずか7~8年で、BIM導入企業に勤める回答者の約4割が使うまでに普及しました。
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BIMの活用業務が建設フェーズ別、業務別に明らかに
BIMの社内的、作業的、職種的価値とは?
設計の“見える化”が生産性向上に大きな効果
BIMによる生産性向上の“原動力”となっているのが、「3次元での設計可視化によるコミュニケーションや理解度の改善」という効果です。この強みを生かして、BIM導入企業の3割で「施主の設計・施工への参画によるコラボレーション」を実践していることが明らかになりました。
このほか「設計図書間で整合性が取りやすくなる」、「設計変更に伴う手間やコストが減少する」といったBIMモデルを使った自動処理による生産性向上も認められています。これらの業務効率の改善には、BIMモデルの「属性情報」の活用度もかかわっています。
BIMによる業務改善の内容は、建築設計事務所と建設会社との間でかなり違いがありました。例えば、最も多い改善効果は、意匠設計事務所では「図面など設計図書のミスの減少」だったのに対し、建設会社では「手戻りの減少」だったことです。
また、意匠設計事務所でのBIM活用効果は設計段階だけの範囲にとどまる傾向があるのに対し、建設会社は設計段階から、工程や工期の短縮、プレハブ化や工場製作、顧客に対するイメージアップまで、幅広い業務で効果を実感しています。
この調査レポートでは、日米でのBIMの活用や考え方、効果などの比較も行っています。日本では基本計画や事前検討などプロジェクトの上流部分での活用が多いのに対し、米国では設計図書の作成や施工管理、工場製作など下流部分での活用が目立っています。
意匠設計事務所における業務改善の内容
BIMの導入で各社の業務はどう変わったのか?
発注者や設計事務所、建設会社などのBIM活用最前線を直撃
では、発注者や設計会社、建設会社、設備、メーカーなどでは実際にどのようにBIMを導入し、実務で活用し、効果を上げているのでしょうか。
今回のレポートでは、BIMの試行プロジェクトを実施した国土交通省や受注者の梓設計、トップダウンでBIMを推進する安井建築設計事務所の取り組みやビジョン、清水建設横浜支店におけるフロントローディングの実例や設計・施工分野におけるコラボレーションを紹介しました。
また、東芝エレベータやNTTファシリティーズの設備分野での活用手法や、家具の海外生産を軸としたサプライチェーン・マネジメントを実践するペーパレススタジオジャパンの取り組みも取材しました。
今回の調査結果や活用事例から分かるのは、BIMの導入は意外に即効性があるということです。導入後、1~2年しかたっていない企業でも、施主へのプレゼンテーションなどに効果を上げています。そして、BIMの導入企業と未導入企業の間では、急速に差が開きつつあるのです。
建設業の新しい成長戦略に、BIMはもはや欠かせない経営資源と言っても過言ではないでしょう。「BIM活用実態調査レポート2011年版」で、その現状を詳しくご覧ください。
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清水建設横浜支店でのBIM活用事例